このブログは
〇資金繰り等で困っているが、どう改善したらいいか分からない
〇今の経営を改善すべきなのはわかっているが、どこから手を付けていいかが分からない
〇金融機関から経営改善計画を立ててほしい、と言われたがどうしていいか分からない
といった中小企業経営者、とりわけ小規模な企業の経営者の皆様向けに作成させていただいております。
はじめに
このサイトをご覧になられている皆様は、何かしらの経営改善の必要に迫られ、日々対策をたて、実行されている経営者の方々だと思います。
もし、本当にそうなのだとしたら、以下の問いにすぐ答えられますか?
“貴社の1カ月平均の売上・原価・経費・借入返済額はいくらですか?”
これ、意外と答えることができない方が多いです。
最初の質問に答えられた方でも、“ではどのように売上・利益を改善しようとしていますか?その改善策で、どのように改善される目論見ですか?”この質問はほとんどの方が答えることができません。
これは無理もない話で、日々の仕事に追われている経営者の方々はそれどころではない、という方が多いと思います。
しかし、これは、言葉を選ばずに言い換えると、「地図を持たずに旅をしている」状態なのです。
そこで、まず、現在ご自身がどこにいるかを把握(現状分析)し、行き先(目標)を定めて(=経営改善計画)、そのうえで、実際に進んでいる道(現在の経営状況)とのずれを常に修正する作業が必要になるのです。
これで、(経営改善)計画を作成することの必要性を少しは、ご理解いただけたと思います。
ではどんな計画を立てればよいのでしょうか。
経営改善計画作成において、一番大事なこと
一番大事なこと=売上計画
経営改善計画を作成することにおいて(特に金融機関等に提出する計画を立てる場合においては)いくつか守らなければいけないルールがあります。
ただ、これは最後に専門家に見てもらって修正すればよいのであって、経営者の皆様が最初に意識すべきことは、「実現可能な売上・利益計画(以下わかりやすさを優先して“売上計画”とします。)」を立てることの1点なのです。
<ご参考:経営改善計画の策定に関する基準>
経営改善計画の策定において、特に金融機関への提出において意識すべきルールとしては、
「実抜計画」:実現可能性の高い抜本的な経営再建計画と
「合実計画」:合理的かつ実現可能性の高い経営改善計画の2種類があるのですが、
中小企業の場合は、合実計画の基準を満たせば、実抜計画の基準を自動的に満たすことになっています。
なお、合実計画の基準は以下の通りです。(一部簡素化)
- 計画期間は概ね10年以内
- 計画期間終了後は、債務者区分が原則「正常先」となる計画である。(簡単には、リスケ解消、通常通りに返済を進められる状態)
※金融機関の再建支援が不要で、自助努力により、事業の継続性の確保が可能な状態となる場合は 「要注意先」でも良い - 取引先銀行の合意を得られるものであること。
- 計画にあたり、新規の資金提供を伴わない(金利減免や融資残高維持等にとどまる、新規融資を行う場合は、金融機関サイドで全額引当済みで今後の損失発生が見込まれない、等)
なぜ売上計画なのか
経営改善計画を作成するにあたっては、無駄な経費の確認を行うことは当然必要なのですが、それで資金繰りが改善するような状況であればよいのですが、中小企業にそれだけの無駄があるケースは少ないです。(大体、それがわかるならすでに実行に移されているはずです)
そのため、売上計画を考えることが最重要になるわけです。
※なお、金融機関は、貴社の置かれている状況が苦しければ苦しいほど、新たな融資は行ってくれない可能性が高いです。その理由は改めて…
売上計画の検討にあたって
売上計画を検討するにあたっては、
- 概ね9名以内の企業 (小規模な中小企業)
- 概ね10名~30名(最大でも50名程度)の企業 (中規模な中小企業)
- それ以上 (大規模な中小企業)
で検討方法が異なります。
簡素に表現すると、「経営者の力だけでなんとか売上を改善できるかどうか」という点で相違するため、検討方法に差異が出ます。
過去の事案から見たときには、小規模な中小企業(概ね9人以内の企業)の場合は、大体の場合、経営者が本来業務に集中すれば、売上も利益も改善されることがほとんどです。
そのため、「売上を改善するために、経営者は何をするのか」「そのためのステップをどう作っていくのか」ということが最重要となります。
一方で中規模な中小企業(概ね10人~30人の企業)の場合は、経営者が本業に集中しただけでは人件費などの固定費を賄いきることは難しいことがほとんどです。
そのため、組織をどう改善するのか、誰にどの程度の売上を担ってもらうのか、また、これをサポートする体制をどのように整備するか、という点を含めて検討しておく必要があります。
※大規模な中小企業の場合は、原則的に、中規模な中小企業に準じた考え方となります。
小規模な中小企業における売上計画の立て方
一般的に計画を立てましょう、ということになった場合は、
- SWOT分析などの手法を用いて現状把握を行い
- この現状に対して目標を重ね合わせ、現状と目標の差異を解決すべき課題として設定し
- この課題をどう克服するかの対策を検討する
という手順で考えていきます。
目標の設定と解決すべき課題を検討するにあたっては、以下の手順で検討していきます。
- 経営者が売上向上に取り組んだ場合の売上増加見込額を算定
- 取り組みに関する阻害要因を排除するために必要なコスト(一時費用・固定費用)を算定
- そのうえで、無用と思われるコストを削減
1~3の順に、プランをいろいろな角度から考えて、何度も見直しし、これなら将来的に収益改善できる、という道筋が見えてきたら、細部を検討して、これで計画のメインフレームが出来上がります。
理由としては、そもそも会社がどうスタートしたのかと考えると、スタートはある程度順調に売上が上がっていたはずなのです(さもないと、そもそも事業自体が成り立っていないはすです)が、ある日を境に経営者が売上向上以外の様々な事柄に足を引っ張られ、バランスが崩れ、ゆえに生産性が落ちている場合がほとんどなためです。
そのため、足を引っ張る事柄について見直しを行うと、検討の道筋が見えてくることが多いです。
中規模な中小企業における売上計画の立て方
そもそも、小規模な中小企業と中規模な中小企業における最大の違いは、「組織の構造」です。概ね中規模になると、経営者の下に、別の長(的な存在)がいて、その長が率いる組織が1ないし複数ある、という、3階層以上の組織になっていることが多いです。
そうすると、経営者自身だけで何かをやろうとしても、当然ながら影響を及ぼすことができる範囲は限られた状態になっているわけです。(経営者一人で構成員全員分の売上を上げられる事業であれば別ですが…)
経営者自身のみではすべてをこなすことはできないため、組織内の役割を整理し、また、改善に関する方向性や優先順位を整理し、各構成員が行うべきことや判断基準を分かりやすくすることが大事です。それにより、構成員の能力を最大に発揮することができるようになります。
このようにしてまず組織の単位や役割を整理したうえで、売上計画を担う部署が計画を検討し、これをフォローする部署が計画に係る可能性や課題を整理し、この繰り返しで、売上計画を決定していく流れとなります。経営者はこの繰り返しの過程において、調整を図っていくことが主な業務となります。
おわりに
このブログでは、経営改善計画を立てる際に最初に着手すべきことについて記載いたしました。
その他、経営改善計画に関しては、これ以外にも、検討にあたっての様々な「コツ」があります。これらのコツについてご相談がありましたら、【→こちらへ】